昭和からの贈りもの 第4章昭和9年〜12年 東京市立第2中学校時代の記録 後編

 5-7.昭和10年・修学旅行 お伊勢参り   ・ 


修学旅行 伊勢神宮/昭和10年

この時の修学旅行は、前頁の豪華客船【龍田丸】に乗船して一昼夜かけて関西に向かい、その後は伊勢神宮、奈良、京都、大阪と各地を巡ったそうですが、上はその時の伊勢神宮に行った時の記念写真です。

伊勢神宮の起源は紀元前といわれ、古代は皇室の氏神とされていましたが、後に日本全体の鎮守と武士に崇敬され、更に最高神と崇められます。

江戸時代になると、《一生に一度は行きたい》と言われ、【おかげまいり】と称して、当時の人口割合で見ると、5人に1人が伊勢神宮に旅をしたそうです。
その頃は江戸から15日もかかり、関西からも4、5日はかかったそうですが、そうした事から色々なお話も作られました。

むかしばなしの朗読CDの【お星さまの贈りもの3 むかしむかし】に収録している【月日がたつのは早い】は、そうした《お伊勢参り》をテーマにした昔話です。
お月様と、お日様と、雷様がそろってお伊勢参りに行こうという昔話ですが、トンチが利いた楽しい昔話です。

明治時代になって、神仏分離令が発せられ、各所の神社仏閣が廃される中、伊勢神宮は《日本全体の鎮守》と位置付けられ、昭和になっても《お伊勢参り》は神聖なものとされていたそうです。

この修学旅行の時も、神聖な場所として生徒たちは詣でたのでしょうね。

そして右上は平成19年11月に娘と一緒に伊勢神宮に行った時ものですが、確かに参詣の人が多く、駐車場のナンバーを見ても、日本全国さまざまな所から訪れているのが判りました。
そして大きな鳥居も70年以上と変わらず、どっしりと建っていました。

また、この近くには、平成5年に出来た【おかげ横丁】という商店街がありますが、築100年以上の家屋や、江戸情緒がたっぷりお店が並び、散歩して歩くだけでも楽しい通りです。
この《おかげ》というのも、江戸時代の《おかげまいり》から付いた通り名でもあるようです。


伊勢神宮/平成19年

おかげ横丁
そしてこの伊勢神宮名物でもあり、おかげ横丁を代表するお店が、創業宝永4年(1707)の【赤福】です。

残念ながら、訪ねた時は賞味期限改ざん問題の時で、【赤福】は戸を閉め、営業停止中でした。

ならば・・・とお店の前で写真を撮っていたら、地元の新聞社の方に『今回の赤福の問題の件をどう思われますか?』等と取材を受けてしまいました。

もちろん
『冷凍は家庭の主婦なら皆自宅でしていますし、表示さえすれば問題は無いはずです。伊勢にはなくてはならない赤福ですから、早く再開して欲しいですね!』
と答えてきました。

また、伊勢神宮の近くには、日本神話でも知られる天の岩戸(あまのいわと)があるとの事で行ってみました。

素盞嗚尊(すさのおのみこと)の所業に怒った天照大神(あまてらすおおみかみ)が引き篭もった岩が、天の岩戸とされますが、右がその天の岩戸です。

神話では、この岩の前で神様が集まり、天照大神を出そうと、踊ったり歌ったりしたと言われていますが、実際に訪ねた天の岩戸は以外に小さい岩穴で、中からは日本名水百選に選ばれら美味しい湧き水が出ていました。

もっとも、全国に天岩戸と言われる場所はいくつかあるようですが、ここに来るまでの道のりがとても爽やかな渓谷で、気持ちが良いところでした。

さすがに、バスは通れない細い道でしたので、伯父たちは行っていないようですが・・・。

休業中の伊勢名物赤福店頭にて

天の岩戸

この時の修学旅行では、写真の伊勢神宮以外にも関西方面を周ったそうです。

京都では御所や二条城を訪れ、比叡山を参り、奈良では法隆寺や東大寺、そして奈良公園等を巡り、鹿に餌をやったりしたそうです。

そして大阪では大阪城天守閣等に登ったそうです。

特に大阪城に関しては、江戸時代の1665年に天守閣が焼失して以来、長い間天守閣を持たない城が続き、更に慶応4年の鳥羽伏見の戦いで、城内の建造物殆んどが焼失します。

それが昭和6年にようやく天守閣が復興したばかりでしたので、大阪城は特に楽しみな訪問先だったようです。

左の写真もそうした訪問先のもので、他にもたくさん写真を撮ったそうですが、学校に提供した為、伯父の手元にはあまり残っていませんでした。

因みにこの頃の修学旅行には、自由時間や自由訪問などはなかったそうで、殆んど団体行動たったそうです。




右は《大阪城参観記念》のスタンプが押された昭和初期に、大阪市によって発行された【大阪城】という本です。

今のガイドブックと違って、大阪城の沿革から歴史などの詳細。

大阪城近辺の地図から大阪城平面図。
そして今はない伏見櫓の写真などが掲載されたものです。


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