昭和からの贈りもの 第6章 昭和13年〜16年 東京外国語学校時代の記録

 6-43.昭和16年・一ツ橋 3   ・ 

当初不明だった橋が【一ツ橋】だと判った事から、伯父にその一ツ橋の写真を見てもらい、その足で実際に現在の一ツ橋に行き、そのまま東京外語学校があった平川門から竹橋近辺をぐるっと一回りして来ましたら
「いや〜ここに改めて来たのは戦後初めてかもしれないな〜。
いやいや、実際は来ていると思うけど、改めて学校があった場所を確認したのは初めてだよ・・・とにかく懐かしい・・・」
と言いながら、いろいろな事を思い出して聞かせてくれました。


一ツ橋にて/昭和16年

上の写真も一連の一ツ橋の写真と同じ人たちは写っていますが、『何故二人だけスーツ姿なの?』と聞きましたところ、
「思い出したよ!この二人は同じフランス語の山脇君と山川君で、徴用の為に、他の同級生より一足早く海軍に赴くことになったんだよ!
そして最後にスーツ姿で学校に挨拶に来た時に、教室にいた連中で記念写真を撮ったんだよ!」
そうして何人かで学校近くの一ツ橋まで行き撮ったのがこれらの写真のようでした。


一ツ橋から皇居方面に向かっての記念撮影

スーツ姿で帽子を被っている背の高い方が山脇さんという方で、【昭和14年・葉山別荘】にも写っていますが、体が大きく学生時代は野球の選手だったそうです。

『中ほどの方だけ何故三つ揃いのスーツ姿なの?』と聞いたら
「彼は山川といって、お母さんは森村学園からお嫁に入った方だよ」
「兄さんは北海道の栗林造船のお嬢さんと一緒になったなぁ・・・」
など本人の家族の細かいことなども思い出したようでした。

二人は後の学徒出陣の前に徴用となり、まもなく上海などに赴任となったようですが、この写真の撮影時期は9月から10月にかけてとの事です。

この一ツ橋は、親柱を見ますと、大正十四年十一月竣工のプレートがありました。
関東大震災の際に被災し、木造の橋が消失した為に、新たに架けられたものですが、かつては写真の親柱には灯りが灯っていたそうです。
現在も中を見ると、電線のようなものが見えますが、灯りが消えて随分と経つようです。





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